MAGAZINEマガジン

連載

199545988

『四国88ヵ所歩き遍路の記 vol.4』SF=少し不思議な体験の覚え書き " 犬と自転車 "

*TAO LABより
前回、「同行二人」を感じた体験を記したが、それに繋がっているような、少し不思議な出来事が、この旅にはいくつもあった。
その中でも強烈に憶えている二つの体験を記録します〜まずは、そのひとつ。

当時の遍路道には、スマホのナビなど存在しない。頼れるのは、ところどころに立つ道案内の看板だけ。しかも道は広い一本道ばかりではない。住宅街を抜け、山裾に入り、くねくねと曲がり、時には道が二つにも三つにも分かれる。

それらを一つ一つ、まるでパズルを組み立てるように選びながら、歩いていく。
当然、迷う。引き返すこともある。
それでも歩みだけは止めず、一歩ずつ前へ進む。

どこの山道だったのか、正確な記憶はない。
登山道というほどではないが、舗装もされていない細い道で、両脇から草木が覆いかぶさるような、丘の道だった。

周囲に家はなく、その道が二股、三股に分かれている。だが、肝心の道案内の看板が、どこにもない。

「困ったな......」

そう思った、その時だった。

何十メートルか先で、植物をかき分けるようにして、一匹の野良犬が現れた。
こちらを、じっと見ている。


注:この犬は飼い犬ですが、まさしくこんな感じの犬が突然、現れました。

正直、ビビった。
「ヤバい......襲われないよな?」
吠えられるならまだしも、もし噛まれたら最悪だ、と身体が固まった。

すると、その犬は――こちらに向かって来るでもなく、急に進行方向を変え、歩き出した。

まるで、
「ついてこい」
そう言っているかのように。

「えっ......?」
安堵と同時に、
「あれ? もしかして、道案内してくれるのか?」
そんな考えが浮かび、半信半疑のまま、その後をついていった。

分かれ道はいくつもあった。
そのたびに犬は立ち止まり、振り返り、
「こっちだぜ」とでも言うように進んでいく。

そして――そんな林道を抜けた先で、あらためて遍路道の案内看板が現れた。
気づいた時には、その犬の姿は、もうどこにもなかった...

このワンちゃん、誰だったんだろう?誰の使い??
でも――確かに、助けられました。

もうひとつ。
こちらは、道後温泉だったと記憶している。

先ほどの林道とはまったく違い、街なかにあるアーケード付きの商店街。人通りも多く、行き交う声や生活の気配に満ちていた。

道が広く、人が多い。それだけで、不思議と安心してしまう。
「道を間違っているのでは?」
そんな疑問すら、浮かばない。

その時だった。

前方から、なぜか一台の古い自転車が近づいてくる。今ではほとんど見かけないような、旧式の自転車。そして、乗っている男性の様子が、どこかおかしい。
健常者ではない。言葉にするなら、何らかの脳の病を抱えているように見えた。

距離が縮まるにつれ、自転車は減速しない。むしろ――こちらに向かってくる。

「あっ......ぶつかる!」

避ける気配がない。ぶつけに来ているかのような勢い。
瞬間的に、背筋に鳥肌が走った。

「ヤバい......」

そう思った、まさにその瞬間。
彼がオレの真横を通り過ぎたとき...ほんの小さな声で、オレの耳元に向かって、こう囁いた。

「道、間違ってるよ〜」

それだけ言って、彼はそのまま、何事もなかったかのように走り去っていった。
一瞬の出来事だった。

あとになって、分かった。
確かに、その道は正解ではなかった。一本、別の道を選ぶ必要があったのだ。

彼は、誰だったんだろう。誰の使いだったんだろう。
答えは、今も分からない。

ただ一つ確かなのは、あの声がなければ、オレは道に迷っていたということだ。
山の中では、犬に導かれ、街の中では、人の姿をした誰かに声をかけられた。
どちらも、「同行二人」を「今」こそ、強く意識、納得する出来事だ。
「今」あらためてこの二つを並べてみるだけでも、旅の最初から、見えない伴走者が、すでに隣を歩いていたように思えてならない。

導きは、いつも分かりやすい形で現れるとは限らない。時を経て、ゆっくりとハッコウした出来事が、ある日ふいに胸の奥で花開く。

「同行二人」は、確かに真実だ。
それは、頭で理解するものではない。「行動」し、「歩き」、「体験」した者にしか届かない感覚として、ハッキリと残る。

そして今回の旅は、「同行三人」。
弘法大師、モーゼさま。そして、この道をともに歩むあなたと。

言葉ではなく、思想でもなく、この身体と時間を使って、あらためて――ぜひ、「同行三人」「始国」その体験をさせてください。


【四国88ヶ所歩き遍路】
本日から3月3日スタートまで67日

【クラファン始動】
2025.12.05 → 2026.01.31
同行三人。あなたの〈夢〉と祈りを背負い、1400kmを歩きます。
そして----創り、残す「始国(しこく)」巡礼の書。
https://camp-fire.jp/projects/892092/view
よろしくお願いいたします、皆の衆:)

NEXT

PAGE TOP