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花と熱海と大塚実その2

~日本花の会 和田博幸氏に伺う~vol.2

前回からの続き、第二弾です。

ー梅園の工事をまだ行っている時期、熱海の梅園からくだり、市内中心部を流れている糸川の遊歩道の再整備も始まっていますね?

和田 そうです。熱海の中心を流れてる市内中央町~銀座町に流れている糸川沿いの遊歩道にはあたみ桜が植えられていましたが、これに混じって八重桜やクロガネモチなどの常緑樹も植わっていました。

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工事前の景観〈Photo:和田博幸〉

熱海市に特有のあたみ桜がせっかく植えられていても、他の樹木と一緒では日本一早く咲く桜の景色が損なわれていました。
そこでこの糸川遊歩道でも大塚会長の支援を受けて、温暖な熱海市にふさわしい、熱海市にしかない桜並木づくりが、2008年から3年計画で始まりました。

まずは地域住民に計画案を承認してもらうために説明会を開きました。地域で親しまれていた糸川沿いの並木をあたみ桜のひと種類にしてしまうので、このことについて最初は反対意見もありました。資料を用いて計画案を何度か丁寧に説明させてもらい、理解をなんとか得ることができました。

*参考資料
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注)クリックすると拡大します

ーそうだったんですか...梅園と違い、ここは市民の生活エリアでもあるといえますが...諸手を挙げて、即、受け入れられたわけではないのですね。熱海はもちろんのこと日本の景観を大切に想ってくれている大塚会長の粋な資金提供と和田さんはじめとする皆さんのビジョンと経験に裏付けされた美しいランドスケープデザインにもかかわらず...まずは地域住民とのまさしく"地ならし"から...ご苦労さまでした!そして実行、故郷伊豆熱海のために有難いコトです。

和田 工事は2009年11月から始まりましたが、歩道の下には水道管や電気の配線などが複雑に敷設されてたうえに、土には瓦礫なども混ざっていたので、地下埋設施設は整理し、あたみ桜の根の周りは、工事後に桜の根が歩道を持ち上げたりしないように、特殊な土壌改良が施されました。

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根元周りの土壌改良〈Photo:和田博幸〉

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工事直後の糸川遊歩道〈Photo:和田博幸〉

当初は3ヶ年に分けて工事をする予定でしたが、第一期工事が終了してみると、糸川沿いの桜並木が整然と整った景観に再生したのを見て、地域の方々から「工事が未着工の地区も早く再生を図って欲しい。」と要望が出て、工事は残りの2年を待たずして1年で完工することができました。

ー実施繰り上げ要望が来たとのこと、なによりです、良かった!!

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〈Photo:澤田聖司〉

ーまた「温暖な熱海市にふさわしい、熱海市にしかない桜並木」...卓見ですね。"ベストワン"はいつか必ず破られますが、"オンリーワン"なら競争する必要もない...これからはすべての町が「観光地」として競合競争する時代だという視点もありますが、ここに大切な意識と大きな方向性のヒントがありますよね。"オンリーワン"なら競争ではなく、独自性を追求。結果、オンリーワン同士だからこそ共存できる、さらに相乗効果が生まれる可能性すらあります。センスや質の良いオンリーワンなら美味しい献立と一緒でたくさんあったほうが"豊か"です。

和田 あたみ桜は梅園の梅と同時期、1月上旬から咲き始めます。ひとつの枝に早期に開花する花芽とその後に開花し始める花芽の二段構えで咲きます。ですので開花期間も1ヶ月以上に亘り楽しめます。開花期には「あたみ桜糸川桜まつり」が開催され、桜まつりも地域に定着し賑わいを見せるようになりました。

本州では一番早い桜まつりです。もっとPRして、全国からもっとたくさんの花見客が受け入れられるようになることを期待しています。

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〈Photo:和田博幸〉

ーおっしゃるとおりです。現状の継続的なPRとともに、さらに中期的にはあたみ桜を楽しめる範囲を糸川べりだけではなく、広げたら。さらなるボリーム観も必要かと。線から面へということで熱海行政と観光関係者、さらに各町内市民も加わっての三位一体で皆さんの善意を時間をかけても広げていく。観光イベントとしても花街でもあった熱海市内での花見というのも乙かと〜ネオ花街というかこれこそがホンモノの花街 笑。余談ですが、もともと熱海市内の町名は植物に由来するものがとても多いんですよ。このプロジェクトを推進してくれた方たちへの恩返しとしても。

和田 そうなったら大塚会長も喜んでくれると思いますよ、きっと。

ー日本の景観をそれぞれのエリアで皆が引き継ぎ、世界に誇れるオンリーワンとして 注1)『ガーデンアイランズ ニッポン 』が復活したら。

和田 まさしく。またさらにこの遊歩道には5月から11月に開花する南国の花ブーゲンビリアも植えてあります。以前からあったブーゲンビレアにさらに本数を加えボリュームも増しました。

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〈Photo:澤田聖司〉

ブーゲンビレアは5月から12月まで長い期間花が楽しめます。他にもヒペリカム・ヒドコート、ルリマツリなども加え、多様な花の景観が楽しめるエリアとなりました。以前からあったユニークな海の生き物をアートとして表現した欄干も目立つようになり、桜祭りの期間中は、夜にはライトアップもされます。

*参考資料
糸川桜並木の再生について.pdf

◆データー 糸川遊歩道
計画:2008年開始
第一工期終了:2009年11月30日
第二工期終了:2010年11月30日
第三工期終了:2011年11月30日
総工費:8千6百万

全長約130m
熱海櫻約60本
ブーゲンビリア約40本

●5月~12月
「南国の花ブーゲンビリア」
花の色は赤から白まで変化に富み、ピンクやマゼンタ、紫、橙、黄のものもあるように見える。しかし、実際の花はいわゆる花の中央部にある小さな3つの白い部分である。色づいた花びらに見える部分は花を取り巻く葉(包葉)であり、通常3枚もしくは6枚ある。

●1月上旬(早いときは12月中旬ごろから)~2月中旬
「日本一早咲きあたみ桜」
日本一の早咲きの「あたみ桜」は毎年1月上旬~2月に咲くインド原産の寒緋桜と関西以西に分布する山桜との交配、河津桜より早く咲く種類の違う桜。明治4年頃イタリア人によってレモン・ナツメヤシとともに熱海にもたらされ、糸川以外の市内の多くの場所に植栽されている。

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*第9回あたみ桜糸川桜まつり
2019年1月12日(土)~2月11日(月祝)
いよいよ今週末から始まります!伊豆河津桜とともにまずは伊豆あたみ桜で春一番お楽しみください!!
https://www.ataminews.gr.jp/event/208/

和田博幸 わだひろゆき
1961年生まれ 57歳
群馬県高崎市出身
東京農業大学農学部農芸化学科卒業
公益財団法人"日本花の会" 主幹研究員
樹木医

〜つづく...花と熱海と大塚実その3

注1)ガーデンアイランズ
現 静岡県知事 川勝平太氏の学者時代からの提言。当時から素晴らしい方向性だと確信していました。
これとともに川勝氏の『道州制』の具体的なプラン(区分け基準とその素晴らしいネーミングにシビレます。)も含め、なぜ、実現のための実行、地球時代のニッポンのカタチの必然として国を運営している方たちのなかでないのか?不思議です。未来の地球の雛形が東洋でもない、西洋でもない、また、資本主義でもなく、ましては共産主義(この日本語訳が素晴らしすぎてかえって弊害となっています。)でもない『和の国 日本』にその種が置かれているにもかかわらず。

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