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万物日本霊長辞典

からだに宿る "生命の宇宙" を時空を超え、日本語脳で読み解いた解剖学者・三木成夫

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*TAO LABより
先日の川島さんの「意識の目と骨法」で紹介されていた三木成夫さん...20代の頃=1980年代にハマりました。
このタイミングで"わた史"を記録させてください。

1960年代、ドラッグカルチャーも影響を与えたであろう「意識革命」を経て、70年代に入ると、西洋発の従来の科学や心理学の枠を越える新しい思想やアプローチが芽吹きはじめました。
その代表が「ニューサイエンス」と「トランスパーソナル心理学」です。
ニューサイエンスは、西欧科学に根付く物質主義・要素還元主義に対抗し、全体性や相互関係を重視する統合的な科学観を掲げます。
一方、トランスパーソナル心理学は、個人の意識や経験の枠を超え、スピリチュアルな領域を含むより広大な人間意識の探求を試みる心理学の一分野です。

これらの潮流に深く影響を与えたのが、仏教や道教、ヒンドゥー哲学といった東洋の思想です。そこでは、万物の相互依存、心と身体・宇宙の一体性、そして瞑想や修行による内面の変容が重視されてきました。西洋の知的探求と東洋の直観的叡智が交差することで、科学・心理学・精神文化が融合し、より包括的な「人間理解」の地平が開かれていったのです。

こうした世界的な潮流を日本に紹介するうえで大きな役割を果たしたのが、吉福伸逸さんを中心とする"C+Fコミュニケーションズ""C+F研究所"です。彼らは、欧米の最新の心理学やボディワーク、意識探求の方法論を日本語で紹介し、体験型のワークショップを通じて、その思想を文化として根づかせました。

彼らが日本語に移し伝えた知見は、私の10代から20代にかけての精神的な旅路に、確かな羅針盤を与えてくれました。あの頃、この精神的+内宇宙の探求、一歩踏み違えれば危うい世界に囚われかねない中で、その指し示す方向により、相当躓き、堂々巡りはもちろんしましたが:)なんとか、迷うことなく...私をより広く深い地平へ、「今」に導いてくれたのです。

吉福さんとはご縁があり、その後、彼がハワイ・ノースショアに移住された折には、現地で何度かお会いする機会にも恵まれました。
また、吉福さんの仲間であり、鍼灸師で翻訳家でもある上野圭一さんは、最近まで伊東に暮らしておられました。私が大室山へ引っ越してからは、温泉をご一緒したり、彼が協力していた私設図書館へよく遊びに行ったりしたものです。

さらに遡れば、スタニスラフ・グロフさんが吉福さんたちの尽力により来日し、京都で行われたホロトロピック・ブレスワーク(呼吸法を用いた意識探求)のワークショップに参加した際、大変お世話になった彼らのお仲間 ティム・マクリーンさんと高岡よし子さんは現在、伊東で暮らしておられます。

背景とも言える道程、長くなりましたが...そして、この動き+体験と共鳴する形で、日本には独自の生命観を提示した解剖学者・三木成夫さんの存在との出会いがあります。三木さんは、西洋の科学的知見と東洋的な生命観を架橋し、人間を「生命史の流れ」の中で捉え直す視座を提示しました。その思想は、ニューサイエンスやトランスパーソナル心理学と響き合いながら、日本的文脈における「心と身体の統合」を深く照らし出したのです。

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三木成夫(1925-1987)
胎児学や解剖学の視点から「生命の形」と「心のあり方」の関係を探究した伝説的な解剖学者です。
彼の「人間の見方」は、生物を単なる機械や部品の集合としてではなく、進化の歴史と自然環境に貫かれた全体的存在として捉えることに特徴があります。胎児の発生や臓器の形態から、私たちの感情・行動・文化までも生命史的に説明し、人間を自然界の連続性の中で理解しようとしました。 いわば、「人体を通して宇宙や地球の生命史を見る」視点です。

30代になり、決定的な出会いと体験を経て、20代、探求していた「ニューサイエンス」と「トランスパーソナル心理学」――すなわち西洋と東洋の融合ともいえる学びから、多くの国内外の旅+内宇宙の精神の旅を経て、私はその両者を包括し、自らの内に「感覚的」に消化した結果ともいえる地点、50代「日本語脳」に辿り着きました。

振り返れば、三木成夫さんとの出会いも、この「日本語脳」という扉を私に示してくれひとつだったのだと確信しています。

21世紀は、「東洋」と「西洋」、そしてそのどちらでもあり、またどちらでもない「日本」という希有な存在による三角形によって、まるでヤジロベエのようにバランスを保ちながら進む――そんな新たな地球文明の幕開けになると、私は思うのです。

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「胎内に息づく地球史を見つめた、解剖学の詩人」
「骨と臓器に刻まれた星の記憶を紐解く旅人」
三木成夫さんの著作全てオススメです〜ぜひ!!!

こちら三木さんの生徒のひとりであった布施英利さんのこの映像を参考までにアップいたしますね。

「人体、5億年の記憶」とは・・解剖学者・三木成夫の世界(前編)


「人体、5億年の記憶」とは・・解剖学者・三木成夫の世界(後編)

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