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光と色彩〜形と幾何学〜見えないセカイの地図を描く女流画家ヒルマ・アフ・クリント

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*TAO LABより
先日、『ヒルマ・アフ・クリント展』に行きました。素晴らしかったので、今回彼女をご紹介いたします。

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◆ヒルマ・アフ・クリント(Hilma af Klint, 1862-1944)
出身:スウェーデン・ストックホルム生まれ
職業:画家(スウェーデン王立美術アカデミーで正統な美術教育を受ける)
活動時期:19世紀末〜20世紀初頭
思想背景:神智学、人智学、スピリチュアリズムに傾倒
特徴:抽象絵画のパイオニア(カンディンスキーより早く抽象表現に到達)

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◆絵画の特長

霊的世界の視覚化:
見えない次元、魂の進化、宇宙の秩序をテーマ

抽象表現の先駆者:
幾何学、螺旋、象徴、色彩を大胆に用いた抽象作品

「高次の存在」からの啓示:
霊媒的な方法で描かれたとされる(「五人組」との交霊活動)

シリーズ作品:
とくに『十大神殿(The Paintings for the Temple)』は彼女の代表作であり、100点超におよぶ一大霊的ビジョンの集成

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19世紀後半、産業革命と科学の急進展により、伝統的宗教観が揺らぎ始めました。合理主義や唯物論に対する反動として、「目に見えないもの」(霊性・魂・死後・宇宙の意味等)への関心が高まります。
その霊的潮流は

1.スピリチュアリズム(霊媒主義)
1850年代〜欧米で流行。交霊会や自動書記など、死者との通信を試みる

2.神智学(Theosophy)
1875年、ヘレナ・P・ブラヴァツキーらにより創設
東洋哲学・西洋神秘主義・錬金術・科学を融合し、宇宙と魂の進化論を説く
多くの芸術家や思想家に影響

3.人智学(Anthroposophy)
神智学から分派。ルドルフ・シュタイナーが提唱(1902年〜)
芸術・教育・農業・医療などを通じて霊的世界と調和を図る

等を産み出します。

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この霊的な目覚めは、芸術家たちにも影響を与え、内なる世界の表現=抽象芸術の胎動へとつながります。その代表的なアーティストのひとりがヒルマ・アフ・クリントです。特に神智学、人智学との関係が深く

神智学(Theosophy):
彼女は神智学協会に強く影響を受けており、宇宙の構造や人間の魂の進化、見えない次元の存在を信じていました。作品には、宇宙の秩序・二元性(陰陽・男性性と女性性)・魂の進化の過程などが象徴的に表現されています。

人智学(Anthroposophy):
後年、ルドルフ・シュタイナーの人智学にも関心を持ち、内的ビジョンの訓練と芸術を通じた霊的成長を探求しました。作品に見られる幾何学、色彩、螺旋などは、人智学的な宇宙観と一致する部分があります。

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なるほど、友人に教えられて、ネットを通してヒルマ・アフ・クリントの作品に触れたとき、私はその瞬間、深い共感とともに彼女のセカイに惹きこまれました。彼女の作品に流れる霊的なバックボーンの波動は、まさに私自身が長年探求してきたテーマと響き合うものでした。ヒルマ・アフ・クリントは、言葉では表現しきれない世界を、絵を通じて私たちに伝えてくれています。時空を超え、「見えないセカイの地図」を「今此処」未来の私に手渡してくれています。

彼女をあらためて深く探求したいという思いが湧くと同時に、私自身も思春期以来およそ半世紀ぶりに、もう一度絵を描いてみたいという衝動が芽生えています。

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