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昭和三十六年の作品=ほのぼのとした情愛を見せる奈良を舞台にした人情ドラマ『好人好日』

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『好人好日』(こうじんこうじつ)は、1961年(昭和36年)8月13日に公開された日本映画。
監督は「世相を反映した人間喜劇」という独自の作風を確立し、松竹の「三大巨匠」として、小津安二郎、木下恵介に並び称せられる渋谷実監督。
主演:笠智衆・淡島千景・岩下志麻。
配給:松竹映画。

で、笠智衆さん演じる奇人の数學者尾関さんのモデルは〜〜〜なんと、岡潔さん!
現在タオラボブックスでは岡潔さんの45年間封印されていた未完最後の原稿『春雨の曲 第八稿』の書籍化を有り難いことに遺族の方々の信頼を得て進めています。

この作品で描かれている笠智衆さん演じる数學者尾関さんのキャラは実際の岡潔さんとダブるところ多々〜もちろんフィクションも織り込まれておりますが。
生前の岡潔さんに会ってみたかったなぁ〜:)天晴れな日本人のひとりかと!

ストーリー

奈良の大学の数學教授である尾関は、こと数學にかけては世界的な学者だが、数學以外のことは全く無関心で、とかく奇行奇癖が多く世間では変人で通っている。
妻の節子はこんな尾関につれ添って三十年。コボしながらも彼を尊敬し貧乏世帯をやりくりしてきたのである。
娘の登紀子は市役所に勤めていて、同じ職場の佐竹竜二と縁談がある。二人は好きあっているし節子もこの縁談を喜んでいる。ただ竜二の家は飛鳥堂という墨屋の老舗で、竜二の姉美津子はお徳婆さまに気に入るように色々と格式にこだわるのだ。
それに登紀子は両親の顔をおぼえぬ戦災孤児で、尾関に拾われ今日まで実の娘と同様に育てられてきたのだった。
しかし登紀子はそんなことを気にしているのではない。彼女はむしろ父のそばを離れるのが忍びないのである。それと同時に竜二が父の気に入るかどうか、これも気がかりであった。
竜二は尾関がしばしば近所のミルク・ホールにテレビを見に行くことを聞き、ある日、自分で組立てたポータブル・テレビを持参すると、尾関は喜ぶどころか怒ってしまった。竜二もかっとなり怒鳴ったが、文化勲章受賞の報せで中断された。尾関は勲章など欲しくなかったが、五十万円の年金がつくと知り、もらう気になり節子と上京した。
東京では学生時代にいたオンボロ下宿に泊って主人の修平を感激させた。その夜宿に泥棒が忍びこみ文化勲章が盗まれた。
ところで、奈良では尾関の帰りを待ちうけて数々の祝賀会が計画された。そんなわずらわしいことの大嫌いな尾関は、とうとう姿をくらまし、関係者を慌てさせた。
そんな騒ぎの中で登紀子は節子が落ちついているのを不思議に思った。「お父さんは下市の和尚さんのところよ」と、自信ありげに節子はいうのだった。登紀子は下市に行き、母の予想が当ったのを知った。
登紀子は竜二との結婚の許しを得ようと話をきりだすと、尾関は「好きな者同士なら勝手に一緒になればいいんだ。儂とお母さんは貧乏で結婚式などあげなかったけれども、もう三十年も続いているんだ。盛大な式をあげても三日も持たない夫婦もある」と、淡々と語るのだった。
結婚式などどうでもいい、と尾関は言ったが、節子は登紀子のために華やかな結婚衣裳をあつらえてくれた。そして彼女の嫁ぐ日も近づいたある日、盗まれた文化勲章を当の泥棒が返しにきた。
幸せそうに肩をならべて帰って行く登紀子と竜二を包むように東大寺の鐘がのどかに鳴りひびくのだった--。

余談ですが、こちらの映画と同じように笠智衆さん・岩下志麻さんが親子を演じた作品に小津安二郎監督の1962年作品『秋刀魚の味』(さんまのあじ)があります。
この作品は小津監督の遺作となるものです。

あぁ〜昭和30年代の日本の家庭、貧しかったけど情がまだ生活に根ざしていましたねぇ。

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