MAGAZINEマガジン

連載

本日の一枚

このアルバム、全然古臭くない!! むしろ新しい〜『断絶 井上陽水』

1stアルバム 1972年5月1日リリース
1200x630bb.jpg
断絶

アンドレ・カンドレとして活動していたが、井上陽水の名義で再デビューを果たした作品。
あらためて最近、井上陽水さんの初期アルバム聴き直しておりました。3rdアルバム「氷の世界」〜日本初の100万枚を超える大ヒットアルバムが超有名ですが、個人的にはこちらの方が好きです。
名盤のひとつ!

編曲はモップスのギタリストだった星さん。 初期、井上陽水さんのアルバムは星勝さんとのコンビネーションが続きました。

全作詞・作曲: 井上陽水、全編曲: 星勝
SIDE A
1.「あこがれ」(「愛は君」のB面曲。)
2.「断絶」(「人生が二度あれば」のB面曲。)
3.「もしも明日が晴れなら」
4.「感謝知らずの女」(「傘がない」のB面曲。)
5.「小さな手」
6.「人生が二度あれば」
SIDE B
1.「愛は君」
2.「ハトが泣いている」
3.「白い船」
4.「限りない欲望」
5.「家へお帰り」
6.「傘がない」

井上陽水 - ヴォーカル、フォークギター
星勝(ザ・モップス) - エレクトリックギター、フォークギター
鈴木ミキハル(ザ・モップス) - ドラムス
三幸太郎(ザ・モップス) - エレクトリックベース
原茂 - フォークギター
来生孝夫 - フォークギター
深町純 - ハモンドオルガン、ピアノ
ジョン山崎(ジャニー・山崎名義) - エレクトリックピアノ

当時、井上陽水さんはホリプロに所属していました。渡辺プロダクションに続く大手芸能プロダクションのひとつです。

私がコロムビアに在籍していた頃は、この事務所の歌手では榊原郁恵さんを、その後には石川さゆりさんを担当させていただきました。

そしてこの時代、陽水さんと同じホリプロに所属していたのが、男気あふれるROCKを奏でていたバンド「モップス」。ヴォーカルは鈴木ヒロミツさん、ギターは星勝さん。
今回ご紹介のアルバムでは、その鈴木さんを除いたモップスのメンバーが、バックの核を担っています。

井上陽水の誕生には彼のマネージャ兼原盤制作ディレクターをしていた川瀬泰雄さんと当時ポリドールにいた多賀英典さんが大きな役割を果たしました。

『アンドレ・カンドレ」という名前で2年間ほどデビュー後の活動がほとんど仕事につながらない状況だでした。ポリドールの多賀英典さんとの出会いがあって、「井上陽水」に名前を改めて再スタートすることになりました。』

この名前変更とともに、マネージャー兼ディレクターとして川瀬さんが多賀さんと協力しながら新たな体制で作品制作を始めたのでした。その一枚目が「断絶」です。

『それまでは、陽水も僕もサウンドを重視していたんですが、根が文学青年だった多賀さんは言葉に対する感覚が繊細で、詞に対する注文が厳しかったんです。陽水に対しても『曲はいいけど、詞が弱い』と指摘して、何度も書き直しを要求した。当時の僕は洋楽思考で、極論すれば、響きさえよければ詞は何でもいいと考えていたんですが、いいメロディーにいい詞が乗ると素晴らしい歌になることを教えられて、目から鱗が落ちました。』

『多賀さんは、単なるヒット狙いの"シングル売り"ではなく、アルバム作品として通して聴ける構成の完成度を重視しました。アルバムだと小手先のごまかしが通用しないから、より丁寧に歌詞やテーマを選んでいこうと。』

結果、多賀英典さんの言葉によって「詞の弱さ」が指摘され、作詞・テーマ性への意識が高まったことと日本にもアルバムの時代が来ている」という多賀さんの判断のもと、単品曲(シングル)ではなくアルバムとしての形を整えることで、アーティストとしての深み/個性を表現しようと意図したことにより、井上陽水が誕生したのでした。

m14585469576_1.jpg

PS
川瀬さんはその後、山口百恵を〜多賀さんはキティレコードを立ち上げ、映画の世界にも影響を与えました。

NEXT

PAGE TOP