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青山堂運歩 by 川島陽一

パルスフィールドアブレーション

心房細動により血栓ができやすくなり、それがわたしの脳梗塞を引き起こしたようです。一年間の心臓の観察モニターによる。期せずして、巨人軍の長嶋茂雄さんと同じということが分かりました。家内が横で「じゃあ長生きするのね」といいます。

令和7年7月10日に辻堂の『湘南藤沢病院(徳洲会)』を受診。当日は、午前に脳神経外科を3か月の定期受診後、午後に一年間の無線式心臓モニターの解析結果を聴くための循環器内科の受診でした。当初脳神経外科の主治医からは、無線式心臓モニターの除去を言われていたのですが、循環器内科の受診はそうはいかなかったのでした。ちょうどその日の循環器内科には、『湘南鎌倉病院(徳洲会)』の循環器内科の先生が来ており、因みに、『湘南鎌倉病院』は、循環器内科、一般には、心臓は湘南鎌倉病院、で通っているくらいに有名な病院なのでした。

というわけで、なぜあのとき、普通の脳血管障害のように、ぶっ倒れなかったのかが、分かり一安心。**パルスフィールドアブレーション(不可逆的電気穿孔法)**で、一日も早い復帰を目指します。

話しは飛びますが、わたしは平成9年7月10日に鵠沼海岸で『湘南むつう整体院』を、週に一日限定で始めました。限定というわけは、あとの週6日は30年前の平成8年8月8日に起業しました『中野むつう整体院』だからです。水曜日の中野のクライアント様を終えるのは、午後8時半。それから中野の駅まで徒歩6分。新宿まで中央線で乗車は4分。新宿から小田急江ノ島線で80分で藤沢駅、江ノ島行に乗り換えて6分で鵠沼海岸駅。そこから徒歩10分ほどで『湘南むつう整体院』につきますと時刻は23時くらいになります。

『湘南むつう整体院』のクライアント様で、おひとりのかたとの思い出話をご披露しましょう。先に内訳をちょっとだけ先行公開しますと、そのかたは実は心臓をおわずらいになられた方なのでした。そして、『湘南鎌倉病院』に通われていたのですから、ひとのご縁とは、摩訶不思議なものだといわざるをえませんね。

その方は、村越康晴(むらこしやすはる)さま(故人、お名前をお出しするにあたっては、ご親族のご了解を得ております)といい、大林組に顧問としてお働きになられておられる方でした。79歳の時に、江の島の橋の袂にあった江の島ビュータワーのころの『湘南むつう整体院』にはじめていらっしゃいました。鎌倉ご在住のお知り合い、大澤さまからのご紹介の方でした。

89歳の時まできっかり二週間に一度御来院なさいまして、「川島君、そろそろ90になる。もう世間には顔を見せる齢ではない。君たちご夫婦はよく鎌倉に出ているようだから、いつか鎌倉に来られるとき着替えのパジャマをもってきてくださらんか」、とお電話をいただきました。

村越さんの思い出はいくつもありますが、一番はあるとき、「川島君、君のやっている治療はすごいと思う。なぜなら、ぼくは不整脈があるのだけれど、整体の後の二時間は脈が正常だ」、とおっしゃる。確かに、村越さんがベッドで整体後に休息をしているときに、カーテンの向こうで時々、ジャラッと時計のバンドの音がしていたのを思い出す。脈を測っていたのだ。

もう一つはぼくを鍛えてくれたことだ。経絡診断という判定技術を使っているのだけれど、手足の指の際21か所、手は親指側から、リンパ、肺、大腸、神経、循環器、アレルギー、細胞代謝、内分泌、心臓、小腸に存在する経絡。足は、左親指は脾臓、右親指は膵臓、肝臓、関節、胃、繊維組織、皮膚、脂肪代謝、胆嚢、腎臓、膀胱、と基本左右対称で、21か所になる。

やはりあるとき、「川島君、きみは早稲田の政経と聞くが、ぼくは建築屋、理工系なんだよ。整体がすぐれているのはわかるが、理論や理屈がほしい」、とおっしゃる。そこで、経絡診断をしてみた、「村越さん、大腸経絡に反応しましたので、経絡を追跡してみます。」経絡をさらに追いかけると直腸に行きついたので、「村越さん、直腸に微かな反応がありました。お若いときに、何かありませんでしたか」と聞くと、「川島君、20才の時に直腸を手術したことがある、あの時は死の淵だったんだ」、とおっしゃり、それ以来信頼をしてくだすったのをいまも思い出す。

初めは、ご自分でぼくのお伝えする、21か所の経絡診断の内で、ヒットする経絡をメモなさっていたけれど、そのうちにぼくがメモを書いた。そうしてメモの小さな手帳は、2冊、そして10年の時が流れた。ぼくの経絡診断は、果たして、通用したのだろうか。

整体院の近く片瀬海岸から鎌倉へ出向き、八幡宮から荏柄天神社、覚園寺道を抜けると天園ハイキングコースの下あたりに、村越さんのお宅が存在した。由比ヶ浜を遠望するひっそりとした生活を、奥様と静かにお暮らしだったことをいまも懐かしく思い出す。


原稿を書き進めているうちに、もうおひとり、片瀬海岸の『湘南ライセンス』の会長を思い出しました。鵠沼海岸時代に湘南ライセンス、の会長はじめ、社長一族の方々がいらっしゃいました。湘南ライセンスは海のレジャーの専門の会社。じつはぼくたち夫婦も、小型船舶の免許を取得したことがあります。

会長の渡辺寿さんは、かつて、『渡辺ライセンス』という自動車免許の宿泊(地方の免許会社を抱き込んだ)合宿免許の発案者さんでした。ぼくらを、東京から湘南へと導いて下すった道案内人でもありました。

渡辺さんも、実は心臓の持病がおありでした。群馬まで有名な心臓外科医を訪ねたといいますが、あるとき、優秀な医者が『湘南鎌倉』へ招聘されてから、心臓の名医が鎌倉にいるんだという話をされておりました。晩年、湘南むつう整体院のベッドでよく休まれていったこともよき思い出です。

ひとは、何かに導かれていく、という話はよくあることかもしれませんけれど、ついこの間の7月10日はその思いをより強く感じたことでした。すこしばかりの感傷を心にいだきながら。


**パルスフィールドアブレーション(不可逆的電気穿孔法)**とは?

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心房細動などの不整脈治療に用いられる新しいカテーテルアブレーションの一種です。高電圧のパルス電流を心筋に照射することで、心筋細胞を選択的に破壊し、異常な電気信号の伝導を遮断して、心臓のリズムを正常化する治療法です。

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