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本日の一冊
日本発〜ともに学ぶ、ともに遊ぶ...「江戸時代の商人道」と「文化資本の経営」
*TAO LABより
20世紀以降の世界のファッションシーンは、フランスを中心に非常に興味深く、私も長年追いかけ続けています。ファッション界は、音楽や映画の世界と同様に個人発「ヒトのソウゾウ」が色濃く反映された文化的な側面を持つ一方で、時にそのソウゾウをカタチにする方々が相当クレイジーなキャラクターであるという、、、そこがまた、たまらない醍醐味だと感じています。
そんな中で、1970年代から世界で活躍してきた日本人ファッションデザイナーたちについて、改めて深く探求していました。彼らが西洋社会の中で築き上げてきた存在感は、やはり特殊なものがあると感じます。それは、彼らのソウゾウのツール「日本語脳OS」が深く関係していることは間違いないでしょう。
この流れは現在の裏原文化へと通じています。国内外で活躍する多くの日本人クリエイターたちにとって、そんな潮流歴史を紐解くと文化服装学院の小池千枝先生は、間違いなく重要なキーパーソンの一人です。先日、彼女の伝記と共に、小池先生とある人物との対談本を手に入れました。
ともに学ぶ、ともに遊ぶ:福原義春+小池千枝
その対談相手こそ、他ならぬ福原義春さんでした。
福原義春さんとは
福原さんは、資生堂の創業者である福原信三氏の甥にあたり、戦後の資生堂を国際的な企業へと発展させた立役者の一人です。彼は早くから欧米の文化やビジネスに触れ、美術や写真にも深い造詣を持つなど、豊かな感性と国際的な視野を兼ね備えていました。会長在任中は、資生堂ギャラリーの設立・充実や、企業メセナ活動の推進など、企業の文化的な側面の強化に尽力しました。
福原さんは単なる経済的な利益追求に留まらない、独自の経営哲学を提唱し実践した人物として知られています。その哲学の中核をなすのが「文化資本の経営」でということです。
で、1999年に出版されたこちら〜四半世紀を経て"発掘"された名著、復刊〜ということでこの書籍を読んでみました。
文化資本の経営:これからの時代、企業と経営者が考えなければならないこと:福原義春+文化資本研究会
異例の豪華推薦陣!
楠木建/篠田真貴子/松岡正剛/入山章栄/秋元里奈/福武總一郎/高木新平/デービッド・アトキンソン(巻頭解説:佐宗邦威)
「文化資本の経営」は、企業が経済的な資本(お金や設備など)だけでなく、文化的な側面も重要な「資本」として捉え、積極的に投資・活用していくべきであるという考え方です。その意図と内容は、主に以下の点に集約されます。
企業価値の向上:
経済的な指標だけでは測れない、企業の信頼性、ブランドイメージ、そして顧客や社会からの共感といった無形の価値を高めることを目指します。これは、長期的な視点で見れば企業の競争力強化に繋がります。
社会貢献と共生:
企業が単に利益を追求するだけでなく、文化活動を支援・推進することで社会全体の文化レベル向上に貢献し、社会との良好な関係を築くことを重視します。これは、企業の社会的責任(CSR)の先進的な実践とも言えます。
社員の創造性の涵養:
社員が文化や芸術に触れる機会を増やすことで、感性や創造性を刺激し、それが新たな商品開発やサービス、ひいては企業のイノベーションに繋がるという考え方です。
独自の企業文化の構築:
企業が持つ独自の歴史や哲学、美意識などを「文化資本」として磨き上げ、他社との差別化を図り、強固な企業文化を築き上げることを目指しました。資生堂が化粧品という美を扱う企業であるからこそ、文化への深い理解と投資が不可欠であると考えたのです。
福原さんの「文化資本の経営」は、目先の利益に囚われず、企業の持続的な成長と社会との調和を目指す、先見の明のある経営哲学であり、現代のESG(環境・社会・ガバナンス)経営やパーパス経営にも通じる普遍的な示唆を含んでいます。
経済用語〜どうしても横文字カタカナが残念ながら多くなりますが、時代背景や具体的な内容は異なるものの、江戸時代に確立されたニッポンの商人道と福原さんが提唱する「文化資本の経営」本質的な部分で多くの共通点を持っていると気づきます。
目先の利益に囚われない長期的な視点:
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の精神に代表されるように、目先の利益だけでなく、顧客や社会全体の利益を考慮することで、信用を築き、家業を長く繁栄させることを重視しました。
信用と信頼の重視:
商売において最も重要なものとして「信用」を挙げ、約束を守り、顧客や取引先との信頼関係を築くことを第一としました。
社会貢献と共生:
地域社会への貢献や、文化活動(祭りの支援、寺社の寄進など)への参加を通じて、社会との良好な関係を築き、共生することを目指しました。
このように、江戸時代の商人が「家業の永続」を目指して「信用」を基盤に社会との調和を図ったように、「文化資本の経営」もまた、経済的な効率性だけでなく、文化的な価値や社会との関係性を重視することで、企業の持続的な発展と社会貢献を両立させようとする点で共通しています。どちらも、目に見える利益だけでなく、見えない価値を重視するという点で、非常に共通した思想を持っていると言えるでしょう。
なるほど〜です。
単なる紙(今後は数字)である現在の「マネー」を目的とし追求するのではなく、必要なだけの「お足」(お金)は得つつも、「足るを知る」ことが重要になってきますね。そして、人生の最大の目的は
「社会=外の世界に役立つ」ために、自身の「精神性=内なる世界」を充実させること。個々人の「精神性の深化(シンカ)」こそが、「文化資本経営」の根幹にあるべきテーマだと強く感じます。
だって、精神性がともなわない唯物的な今の私たち人類では...「愛」を知った「AI」に〜排除されるのは確実でしょう。そうならないよう、あらためて精進していきましょう。