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本日の一枚

山崎ハコ meets 阿久悠

*TAO LABより
山﨑ハコさんは、日本のシンガーソングライターです。

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飛・び・ま・す

75年発表のデビュー・アルバム。山崎ハコは当時18才でありながら、これだけの完成度と深みのある作品を生み出した。70年代の隠れ名盤のひとつです。
その存在感はまさに"異色"と呼ぶにふさわしい孤高の芸術家です。1957年に熊本県芦北町で生まれ、10代のうちから音楽活動を開始。1975年に『飛・び・ま・す』でデビューし、その陰影に富んだ声と、魂を絞り出すような歌唱で注目を集めました。

ハコさんの音楽には、フォーク、ブルース、演歌的情念が入り混じり、決して流行に媚びない、鋭くも温かい人間観察が通底しています。代表曲「呪い」や「気分を変えて」などに見られるように、彼女の歌詞はしばしば痛みや孤独、生きることの苦しさを正面から捉え、聴く者に深い共鳴を与えます。
世間の喧騒から一歩引いた場所で、自らの声と言葉を信じ、静かに、だが確かに存在を示し続ける〜山﨑ハコというアーティストは、まさに"詩魂"の体現者です。


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横浜から 阿久悠未発表作品集

山﨑ハコさんと作詞家・阿久悠さんとの関係は、日本歌謡界において非常に興味深く、深い精神的交感に満ちたものです。

阿久さんは、昭和歌謡を代表する名作詞家でありながら、単なる流行歌の職人ではなく、時代の底流にある感情や社会のひずみをすくい上げる鋭い詩人でもありました。その阿久悠が、山﨑ハコという存在に出会ったとき、そこには"言葉と魂の邂逅"とも言うべき、稀有な芸術的化学反応が生まれたのです。

阿久さんは、山﨑ハコの持つ暗く沈潜した情念と、独特の言葉遣い、そして声そのものに強い衝撃を受けたと言われています。彼女の表現には、商業音楽にありがちな"計算"がなく、まさに生の叫びがあります。阿久さんはその"叫び"に深く共鳴し、自身が描く世界観を託すにふさわしい歌い手と見なしたのです。
阿久さんにとって山﨑ハコは、アイドルやスターとは異なる"言葉を受け止められる希少な器"であり、ハコさんにとって阿久悠は、"自らの内奥を言語化してくれる存在"だったとも言えるでしょう。

そんなお二人の関係が判るこちらの映像を上げておきます。
ハコさんの阿久さんとの関係についてのトークと共に名曲〜それもハコさんがシンガーソングライターとしてではなく、歌い手として歌唱した二曲=阿久悠作詞:ざんげの値打ちもない+五木寛之作詞:織江の唄〜をお聴き下さい。

この二人の関係は、表面的なヒットや商業的成功を超えた、詩と声の静かな対話として、日本の音楽史に残るべきもののひとつかと。

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