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青山堂運歩 by 川島陽一
根源の「風」
根源がなければならぬ、と荘子はいう。そのものこそ、宇宙的な力であり宇宙論的な「風」である。「風」の存在は眼に見えず、触ることもできないながら、その活動を通じて感ずることが出来る。
「軸椎」の存在する場所、その内側に目を転じてみよう。そこは、「脳幹」、広義には中脳、延髄、橋(きょう)、さらに、間脳を含む部位であり、この小さな部分に多数の生命維持機能、自律神経機能中枢を含む。「軸椎」は根源であり、遊動の世界でもある。
「言語は、従って文化は、こうした社会制度的固定性によって特徴づけられる表層。
次元の下に、隠れた深層構造を持っている。そこでは、言語的意味は、流動的、浮動的な未定形性を示す。本源的な意味遊動の世界。何ものも、ここでは本質的に固定されていない。すべてが流れ、揺れている。固定された意味というものが、まだ出来上がっていないからだ。勿論、かつ消えかつ現われるこれらの意味のあいだにも区別はある。だが、その区別は、表層次元に見られるような固定性をもっていない。「意味」というよりは、むしろ「意味可能体」である。縺れ合い、絡み合う無数の「意味可能体」が、表層的「意味」の明るみに出ようとして、言語意識の薄暮の中に、相鬩ぎ、相戯れる。」
(「文化と言語アラヤ識」『意味の深みへ』井筒俊彦 岩波書店 七三頁)
其寐也魂交、其覚也形開。与接伊為搆、曰以心闘。縵者、窖者、密者。小恐惴惴、大恐縵縵。其発若栝、其可是非之謂也。其留加詎盟、其守勝之謂也。其殺加秋冬、以言其日消也。其溺之所為之、不可使復之也。其厭也加緎、以言其老洫也。近死之心、莫使復陽也。喜怒哀楽、慮喘変熱。姚伕啓態。楽出慮、蒸成菌。日夜担代乎前。而莫知其可萌。巳乎、巳乎。旦暮得比。其所由以生乎。
(『荘子』斉物論篇第二、五一頁)
寝ている時でさえ、人間の心(魂)もまた、さまざまなものごとにゆれ動き、苦しめられる。多くの人は、目覚めているとき身体の機能が絶えず外部の物事に巻き込まれ、そのことに起因して自分の魂を他者と戦わせることになる。その交わり方もさまざまで、緩やかで無頓着、深く入り込むもの、こまやかなものもある。こまごまとしたことを恐れる人は。たえずびくびくしている。大きなことを恐れる人は、かえってゆうゆうとしていることもある。
矢(機(やはず))や飛び道具(枯(ゆはず))の射手のようにすばやい、とは、凡人が事の「正」「誤」を争うときのたとえにふさわしく、神々の前で詛盟(ちかい)を守るかのように頑固であるとは、凡人が手に入れた勝利を失うまいと守るさまの形容としてふさわしい。秋冬に色褪せる木の葉、という形容は、凡人が日毎にこころの活力をすり減らしていく喩えにふさわしい。
彼らは、いよいよ迷い惑いゆくゆえ、後戻りが不可能となる。老いていよいよ頑迷さに道をふみはずすさまは、貧欲さという固く封ぜられたこころを思い起こさせる。かくのごとく彼らのこころが死に近づいたならば、若き日によみがえらせる手段(すべ)はなくなる。
ひとのこころの動きは、楽の音が笛のうつろ(からっぽ)な穴から出る様々な音を想起こさせる。喜びと怒り、哀しみと楽しさ、憂いと歎き、移り気と執念深さ、なまめかしさと奔放さ、あけすけさとわざとらしさ、のように。それらの変化は夜となく昼となく現われる。そのとめどない変化は、どこから生まれてきたのかは、知るよしもない。しかしながら、喜怒哀楽の情をもたらす根源がなければ、、自分という人間も存在することはできない。
其有真君存鳶。加求得其情与不得、無益損乎其真。
(『荘子』斉物論篇第二、五五―五六頁)
やはり真の君主、真の支配者が存在するのではあるまいか。ひとがこの支配者の具体的な姿を知ろうが知るまいが、その真宰(しんさい)(支配者)が存在するということには決して影響を被ることはない。
荘子が、「真宰」を世界の「根源」の働きとするのは、とても意義深いことだ。荘子の「根源」=「道」には二つの側面がある。一つは宇宙論的側面であり、もう一つは人格的側面である。「根源」=「道」=絶対者は、「自然」-ありとあらゆるものに浸透し、存在させ成長させ、朽ちさせ、ついにはそれらの元々あった源泉に返らせる、そのような生き生きとした活力、である。
人格的側面について言えば、神、であり、天地の創造者であり、あらゆる事物事象の「真宰」=主宰者である。造化作用=Nature と神の違いは、単なる見方の違いにほかならない。パーマーの、ユニヴァーサル・インテリジェンスとイネイト・インテリジェンスに見方そのものであると、確心するところである。
*TAO LABより
「根源がなければならぬ、と荘子はいう。そのものこそ、宇宙的な力であり宇宙論的な「風」である。「風」の存在は眼に見えず、触ることもできないながら、その活動を通じて感ずることが出来る。」
という今回のイントロから、「風」繋がりのあるこちらを加えてみます。
「風の時代」という言葉をご存じですか?
これは西洋占星術で語られる新しい時代を表す言葉です。2020年12月22日、200年以上続いた「地の時代」が終わりを迎え、私たちは「風の時代」と呼ばれる新たなステージへと足を踏み入れました。そして、2024年11月20日に冥王星が水瓶座に定着したことで、この流れはさらに本格化していくということです。
この図表に書かれている「地の時代」から「風の時代」への変化、すべてこれからの時代の羅針盤として「今此処」の「道」を歩むうえで参考になると思われます。
地球イッシン、新しい時代にあなたはこの風を掴み、「光」に向かう33.3%か?それとも...