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本日の一冊

先輩と小原國芳先生について〜『テロルの決算』+『山口二矢供述調書:社会党委員長浅沼稲次郎刺殺事件』

*TAO LABより
昨年11月、昭和45年(1970)11月に自死した三島由紀夫さんの憂国忌に参加しました。
で、なんでか彼のことも思い出しました〜三島事件のちょうど10年前、私がこの次元に産まれた年、昭和35年60年安保の年11月に17歳の青年が獄中で自死しました...彼の名前は「山口二矢(やまぐちおとや)」。

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二矢さん...母校玉川学園の先輩となります。
社会党委員長浅沼稲次郎刺殺事件を起こした二矢さんについて書かれた本を手にしたのは1978年秋です。ちょうど玉川大学1年の時。著者は高校時代から愛読していた沢木耕太郎さん、タイトルは「テロルの決算」。
驚きました〜全人教育玉川学園にこんな過激である意味ピュアーな右翼少年がいたなんて〜当時の私は思想的には左翼、心情的にはボヘミアンでしたのでまったくの真逆ではありましたが、強く惹かれました。

「山口二矢は、日比谷公会堂の壇上に駆け上がり、持っていた刀で浅沼稲次郎を刺し殺した。それは、彼が望んだことを完璧に具現化した瞬間だった。山口二矢は、十七歳のそのとき、完璧な瞬間を味わい、完璧な時間を生きた。〜中略〜若くして「完璧な時間」を味わった者が、その直後に死んでいくとき、つまり、物語にピリオドが打たれるように死が用意されるとき、私たちには、それが宿命以外のなにものでもなかったかのように思えてきてしまう。そのように生き、そのように死ぬしかなかったのではないか、つまり、その先の生は初めから存在していなかったのではないかというように......。」
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ひたすら歩むことでようやく辿り着いた晴れの舞台で、61歳の野党政治家は、生き急ぎ死に急ぎ閃光のように駆け抜けてきた17歳のテロリストと、激しく交錯する。社会党委員長の浅沼稲次郎と右翼の少年山口二矢。1960年、政治の季節に邂逅する二人のその一瞬を描く
テロルの決算』沢木 耕太郎 1978年刊

半世紀近く振りに読み返しました。
そしてさらに彼の自死から半世紀経ち刊行されたこちらも見つけ、手に入れました。

「昭和35年(1960)、社会党委員長浅沼稲次郎を刺殺し、"七生報国天皇陛下万才"を獄中に遺し自ら命を絶った山口二矢。その壮烈にして清純なる魂が記された供述調書を収録。父・山口晋平の手記も併載...」
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山口二矢供述調書: 社会党委員長浅沼稲次郎刺殺事件』山口二矢顕彰会  2010年刊

供述調書...は当事者に話を聞いた上で警察官や刑事、検事が書きます。とはいえ彼らが犯罪を立証するうえで証拠となるこの供述書を都合良く意図的に構築すること、残念ながらあります。それを踏まえたうえでの供述調書ですが、拝読させていただいた限り、二矢さん自身の真情は都合良くイジられておらず、その中に込められていると感じました。もちろん、殺人という事実を美化する気は一切ありません。
でも、その真情と結果の行動...彼のような行動をする気はさらさらありませんが、今の私には学ぶところもありました。

なによりもこの書籍に掲載されている元自衛官であるお父さん、山口晋平氏の手記には〜親の「愛」を感じ、目頭熱くなりました。やはり、「愛」は凄いなぁ〜なにがあっても不変だなぁと。
とともに両書にも出てきますが、全人教育玉川学園創立者の小原國芳先生の二矢さんへの「愛」も素晴らしいとあらためて。

「聴講生として所属していた形になる大東文化大学は、この事件が起きた後、世間の批判を恐れ大東文化大学は新聞紙上に《社会党委員長浅沼稲次郎氏刺殺の山口二矢は本大学、学生委員と自称しておりますが、同人は本大学の学生ではありませんので、ここに通告いたします》と急告を出し、二矢の(学生としての)在籍を否定した。
一方、学校法人玉川学園の小原國芳は事件後も二矢を自分の大切な生徒とみなし、少しも変わらぬ態度で接した。」 ー テロルの決算より ー

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客観的には残念でありますが、大東文化の対応はある意味、社会的にはフツーかと思われますが...だからこそ、小原國芳先生の態度、一切ぶれず、天晴れと感動、やはり目頭熱くなります。
二矢さん、小原國芳先生のことはとても信頼し、好きだった模様です。当然ですね〜:)
二矢さんだけではなく、教育者として、何よりも人として生徒=子どもたちすべてを愛し、導いてくれていたそんな國芳先生の元、思春期過ごせたこと、その機会を与えてくれた方たちとともにあらためて感謝の念が〜ありがとうございました。

で、三島さん、二矢さん〜今の私たち日本人はお二人が心配したような精神性の劣化で大変な時期を迎えております。お二人が真摯に想っていたこと、今なら理解出来ます。
人は死んでも死なないと信じてます〜肉体がすべてではなく、精神性は生き続けると...母国母星、そこに生きる私たちをお護りください。私たち人類の未熟ゆえの傲慢な生き方...その事実に気づかさせてください、悔い改めます。
合掌

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