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本日の一冊

超オススメ『マルクスが日本に生まれていたら』英語脳OSと日本語脳OSの違いが良くわかります。

『マルクスと出光は、その出発点...目標は同じでありながら、マルクスは対立闘争の道を歩き、出光は和の道を歩いた〜というような、極端な正反対の姿となった。
これはまったく、マルクスが我欲・征服・利己の祖先を持った対立闘争の西欧の土地に生まれたから、そういう階級闘争の手段を与えられ、出光は無欲・無我天武しの塑尊を持つもった和の土地に生まれたから、人間尊重の道を歩いたということだろうと思うね。
マルクスが日本に生まれていたならば、出光のような道を歩いたかもしれないし、出光が西洋に生まれていたならば、マルクスのような道を歩いたかもしれない...』

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*TAO LABより
昨年よりあらためて「海賊と呼ばれた男」にシビれております、出光興産創業者=出光佐三さん。
手に入る著作をいろいろと拝読させていただいておりますが、どれも素晴らしく、また分かりやすく〜一本、ビシっと筋が通っております。

今回はその中でもタイトルから意味深なこの著作を。

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序論 なぜマルクスをとり上げるのか
一 平和に幸せに暮らす社会とは具体的にどんな社会か
二 人間解放の道
三 歴史と社会
四 経済と経営
五 労働感と貧乏論
六 道徳と宗教
七 マルクスと私

1966年刊『マルクスが日本に生まれていたら』

この書籍が出版されたのは今から半世紀以上前、出光さんは80歳を超えていました。
当時、出光興産の社長室メンバーは出光の経営のあり方を考える材料としてカール・マルクスを研究し、その結果を元に社長である出光佐三と共に勉強会を実施したそうです。この著作はこの勉強会での社長室メンバーの質問に佐三が答えるカタチでまとめられています。

60年代といえば「共産革命」の旗印の下、世界中の知識人や若者たちを中心に激動の時代が世界を覆っていました。そんな時代に、この書籍が...当時、自分は小学生でしたが、たとえば高校生や大学生だったとしても「今」のようにこの書籍で語っている出光さんの言葉に深く共感し、受け止めることは出来なかったでしょう。

『...マルクスとぼくの違いは、人間というものの見方がまるで違っている。人間は非常に矛盾生をもっているものなんだ。人間は口先では人に対して寡欲であれ、無私であれと立派なことを言っておりながら、自分はそれを実行しないばかりか、自分勝手なことをする。あるいはまた理屈を人にふっかけるのは愉快に感じるが、同じ理屈を人から言われると不愉快に感じる。これが人間のむずかしいところで、そういう矛盾性を持っているのが人間なんだ。この人間の矛盾性、資本主義社会であろうと共産主義社会であろうと、どんな社会になってもなくなりはしない。なくなれば神や仏になってしまう。ぼくは、この矛盾性のあるところが、人間らしいところで、人間社会の面白味も混乱もそこにあると思うんだ。

それから、人間には社会のためにいいことをする人もいれば、悪いことをする人もいる。勤勉な人もいれば、怠け者もいる。我欲の強い人もいれば、少ない人もいる。また利巧な人もいれば、能力のある人ない人、健康な人も不健康な人もいる。これが人間社会だ。

それをマルクスのように、分配の時に必要に応じて与えるというようなことを言えば、結局は執行不可能で、悪平等にならざるえない。悪平等ということは、人間の矛盾性、人間性の質の違いを認めていないということだ。

その人間の矛盾性、質を無視しているところにマルクスは根本的な誤りをおかしているといえるのではないかと思うんだ。人情を無視したものを人間社会にあてはめても、それは合わない。人間は公平に扱われなければならない。ぼくが、いつも平等と公平を間違えるな、といっていることはそのことなんだ。人間は公平に扱われて初めて満足するのであって、平等では満足しない。』

資本主義と共産主義、西と東、資本家と労働者、右と左...ある意味、わかりやすい二元論〜そしてその結果の分断。
当時はその眼に見える対立が問題解決の糸口かと思いましたが...冷戦が終わり...その分かりやすい対立が実は仕組まれていたことだったと多くの方が気づきはじめた「今」...あえて詳細をお伝えはしません、願わくば、ぜひ、50年の時を超え、「今」こそ、「自らの意思」で読んでいただきたい一冊です。

出光さん、肉体は離れていますが生き続けている言葉と共鳴、また、精神性と共振してください。そして、その交歓したエネルギーをこの次元に自分なりに変換=カタチに。

60年代に出したこちらの二冊も超オススメです。
三年ごとに出版された三部作ともいえるこの三冊、訴えていること重複するが故により日本人の特性とお役目、クッキリと浮かび上がりますよ!

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1963年刊『「人の世界」と「物の世界」』

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1969年刊『働く人の資本主義 』

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