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「自他一如」〜医の現場から見えること〜 by 岡田恒良

第三十二回 『千島学説とエクソソーム』

千島喜久男博士の業績についてはこれまでも書いてきました。

千島先生はウイルスの自然発生を肯定しないような生物進化論はそれは最早、進化論と呼ぶには値しない、ウイルスが生物の系統発生における細胞前段階の祖先的生物だとする説には賛同しない、さらにウイルスとは細胞ないし生物体が病的状態の下で死への解体過程に現れる病的基本小体である述べています。

ウイルス学の故守山英雄氏も、ウイルスの自然発生を主張し、変異性をもち進化するものだといっています。
革新の生命・医学全集 第1巻 169頁より

動物学者のジェーン・グドール氏は今回のパンデミックには自然や動物の軽視が大きな要因になっていると分析しています。アフリカで発生したエボラ熱では、あきらかにゴリラ・チンパンジーの生息地域を破壊してきたことに関連があるといいます。
Jane Goodall: Disregard for nature caused pandemic(自然軽視がパンデミックを招いた)
Asahi weekly Sunday, April 26, 2020

つまり野生動物の生息域が狭まり、動物の間のソーシャル・ディスタンスが近接した結果、種内に止まっていたはずの常在ウイルスが種を超えて広がったと考えられるそうです。

さらに野生動物の捕獲、食料としての屠殺などが、こんどは人への感染の危険を増すことになったと書かれています。
中国での野生動物の食料市場は即刻閉鎖の策がとられたようですが、アフリカではなかなか実行されない、つまり貧困のためその市を強制閉鎖できない事情があるようです。途上国の貧困対策のためにも、フェアトレードによる輸出入が必要で、すべての国の人々もそれに向き合う必要があると結論されていました。

◆エクソソームの正体
たった一滴の血液から13種類のガンが診断できるというテレビ報道をご存知と思います。かなり前から血液中には細胞由来の核酸(DNAやRNA)の破片が入った顆粒状物質があることがわかっており、エクソソームと呼ばれています。ガン細胞から流れ出たDNAやRNAを調べればガン遺伝子がわかるだろうということで、注目を集めているようです。

おそらくこのエクソソームは他動物にも当然存在しており、動物の血液には、その種固有の核酸の破片が入っており、これが種を超えて移動した際、感染という形をとることが容易に想像されることです。グドール氏の指摘が非常に的を得ていることがおわかりでしょう。同時に千島博士の論理も正しかったことになります。

ところでユダヤ人の厳しい食事規定では、血をけっして口にしてはいけないと教えています。今でも動物性の食事用台所と植物性の台所を区別するのがユダヤ人なのです。長年動物食をしている民ならではの素晴らしい知恵です。
一方日本では四つ足動物を食べない習慣があったので、血を穢れたものとして忌み嫌っていましたが、どちらも理にかなっているのです。

◆PCR検査
Covid19は、RNAウイルスで、約3万個の塩基が並んでいることが判明しています。塩基というのはDNAやRNAの構成部分で、複写するときの接着面にある分子ですから、これがわかれば、複製が可能です。塩基はDNAとRNA共通のアデニンA、グアニンG、シトシンCの3個とさらにDNAにはチミンT、RNAにはウラシルUが加わります。
アデニンは必ずチミン(DNAの場合)、またはウラシル(RNAの場合)とだけ水素結合し、グアニンはシトシンとだけ結合します。ですから4つの塩基にはそれぞれ、必ず相手が一つだけしか存在しないのです。この性質を利用して複写しています。
DNAはA&T、RNAではA&Uの結合です。G&Cが結合するのはDNA・RNA共通です。
(蛇足ですが、ウラシルにフッ素をつけたものが、5FUという抗がん剤です。フッ素という毒物がつくことで、ウラシルが機能しなくなります。)

短時間に目的のRNAをコピーする技術がPCR法です。COVID19の塩基と同じ配列のものを、20塩基ほどの長さ分(プローブ)作り、患者さんの検体(体液など)に混ぜます。
もしぴったり合致する塩基があれば、プローブにくっつきます。

つまりその検体にウイルスが存在したということです。合致しなければ複製できないので陰性という結果になります。
ただ、一回ぴったりあったからといって、それはあまりに微小なので感知できません。

2本になったものを今度は4本に、それを8本にと、倍々に増加させ、20回ほど繰り返すと、やがて100万ほどの数にまで増加するのです。但し、ただのコピーでなく、ネガポジがあるので、ネガがポジを作り、ポジがネガを作るという要領です。
 
PCR法は非常に鋭敏であることは確かですが、元々のウイルスが多かったのか、少なかったのかの判別ができません。全て大量に倍増してしまうからです。感染というほどでないほんの僅かな量であっても、陽性に出てしまうという欠点があります。

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*TAO LABより
下記、専門的な補足ですが参考までに。

エクソソーム
エクソソームは細胞からのメッセージ!?

PCR検査
微生物病研究所からのコロナウイルス情報:ウイルス検出法

*著者 プロフィール
なごやかクリニック院長
名古屋醫新の会代表 
岡田 恒良(おかだつねよし)
https://www.facebook.com/tsuneyoshi.okada1
1955年岐阜県生まれ
1980年岩手医科大学卒
約20年消化器系一般外科医として通常に病院勤務。市民病院で外科部長として勤務中、ある先輩外科医との運命的出会いがあり、過剰医療や過剰投薬の現状に気づき、自然医学に目覚める。
1999年千島喜久男博士の勉強会を名古屋で主催、マクロビオティックの久司道夫氏の講演会企画をきっかけに病院を辞職。
御茶ノ水クリニックの森下敬一博士の機関誌《国際自然医学》に「自然医学の病態生理学」を長期連載。中山武氏の主催するがんの患者会「いずみの会」の顧問をしながら安保徹教授の講演会を開催し、親交を深めた。
看護学校にて補完代替医療について講義中。
2006年コロンビアのドクトル井上アトム氏に出会い、運動療法・自然療法の重要性を認識。以来南米に3度訪れる。 「自他一如」の探求は2000年から続く。

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