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「自他一如」〜医の現場から見えること〜 by 岡田恒良

第十八回 『易と遺伝子』  

 「八卦よい残った!」、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」でお馴染みの八卦とは、もちろん易経のこと。この陰陽からなる易経は、甲骨文字の時代からあったともいわれ、世界で最も古い書の一つです。孔子は易経をもっとも大切にし、その詳細な解説をしていますが、一部に変更を加えたりもしています。さらに50歳にならないうちは易経を読んではならないとも警告しています。

八卦.gif

 陽を「ー」で、陰を「- -」で表し、それを三つ組み合わせて、八卦ができあがっています。2の3乗は、8ということです。
 陽が3つ、すなわち☰を乾(ケン・いぬい)といい「天」を表し、陰が3つの☷坤(コン・つち)は地を意味し、陽陰陽の☲離(リ)は、火を意味しています。その逆の陰陽陰の☵坎(カン)は水を表わし、よく見ると水という漢字にみえてくるから不思議です。この4つが韓国国旗に書かれています。
 残る☳は震(シン)で雷、☴は巽(ソン・たつみ)で風、☶は艮(ゴン・うしとら)で山、☱は兌(ダ)で、沢・喜びをあらわします。お分かりのように、うしとらは東北を、たつみは東南、いぬいは西北なので、これら八卦は方角も表しているのです。
 面白いことにを☰父、☳は長男は☵次男を、☶は三男を表し、その男性4人は陽を表します。☷を母に、また ☴は長女、☲は次女、☱は三女で、この四つは陰です。

 また陽を数字の1、陰を数字の0とすれば、これは3ビットの二進法となります。000、001、010、011、100、101、110、111の8種です。

 易経ではさらに八卦を上下に組み合わせます。8種類の2乗で、64通りの組み合わせができます。24番は上に☷坤(地)、下に☳震(雷)の形なので、地雷復とも、震下坤上で復ともいい11月を象徴しています。一陽来復、願いが叶うという卦がでるというわけです。
 陰陽が6回組み合わせられるので、2の6乗というわけで、6ビットの二進法に相当し、64通りが表せます。1から64まですべてに番号がふられ、15番=地山謙、20番=風地観、32番=雷風恒など、それぞれに意味する内容が当てられています。

 64種類と聞いて、何かを思い出しませんか。理系の方ならこれは遺伝子のコード、コドンの数と同じと気づきます。
 
 これにいち早く目をつけてその関係を紐解いたのが、今泉久雄氏です。(『易経の謎―2000年目に解けた「八卦」の秘密』)

 DNA遺伝子を形作る4種の塩基、ATGC(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)から3つを選ぶと、AAA、AAT、AAG、AACなど64通りの組み合わせが出来上がります。少し詳しい方なら、AのアデニンとGのグアニンはプリン系、TのチミンとCのシトシンがピリミジン系の2種類からなることをご存知のはず。
 今泉はA、Gを陰に、T、Cを陽に当てはめました。すると開始コドンであるATGは、陰陽陰の☵坎(カン)に、 終始コドンであるTAA、TAG、TGAは、すべて陽陰陰☶、これは艮(コン)になります。面白いことに、坎(カン)は水、始まりを意味し、艮(コン)は停止を意味していたのです。なんと遺伝子コードの意味と易の意味が一致するではありませんか。

 またそれぞれのコドンにアミノ酸が対応(重複あり)します。一説に47番=沢水困には、トリプトファンというアミノ酸が当てはまるという見方があります。トリプトファンは必須アミノ酸の一つですが、過剰摂取が問題ともなります。まさしく困るアミノ酸なのです。アミノ酸の働きと易の表す意味が関連しているとしたら、なかなか面白いことになりそうです。

 数とは運命なり、この八卦に関連してもう一つの秘密がありました。 ...続く


*著者 プロフィール
なごやかクリニック院長
名古屋醫新の会代表 
岡田 恒良(おかだつねよし)
https://www.facebook.com/tsuneyoshi.okada1
1955年岐阜県生まれ
1980年岩手医科大学卒
約20年消化器系一般外科医として通常に病院勤務。市民病院で外科部長として勤務中、ある先輩外科医との運命的出会いがあり、過剰医療や過剰投薬の現状に気づき、自然医学に目覚める。
1999年千島喜久男博士の勉強会を名古屋で主催、マクロビオティックの久司道夫氏の講演会企画をきっかけに病院を辞職。
御茶ノ水クリニックの森下敬一博士の機関誌《国際自然医学》に「自然医学の病態生理学」を長期連載。中山武氏の主催するがんの患者会「いずみの会」の顧問をしながら安保徹教授の講演会を開催し、親交を深めた。
看護学校にて補完代替医療について講義中。
2006年コロンビアのドクトル井上アトム氏に出会い、運動療法・自然療法の重要性を認識。以来南米に3度訪れる。 「自他一如」の探求は2000年から続く。

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