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「自他一如」〜医の現場から見えること〜 by 岡田恒良

第十五回 階層社会の始まりと終わり〜病の根源を探る

 この表題は、アルゼンチンで2018年9月20日から23日まで開催されたバイオヘルス世界大会で二番目に発表した演題のタイトルです。

 まず前回報告できなかった井上アトムさんを紹介させていただきます。
終戦の前年に旧満州で生まれ、母親とともに命からがらコロ島から内地に引き上げてきたという苛酷な体験を持っておられます。幼少期は広瀬川と青葉城で名高い仙台で育ち、やがて早稲田大学に進まれました。時は学生運動の真っ只中。柔道の心得のあった井上先生はあっという間に早大闘争の主力メンバーに。苛酷な拘置所生活も体験し、仲間からいつしか「アトム」と呼ばれるようになったそうです。その後ここでは書ききれない様々な体験の後、1971年キューバに旅立ちます。フィデル・カストロに賛同し、新生国家キューバを助けんと、意気込んでの海外生活。アトムさんはその後、ニカラグアなど中南米各地で生活されながら、やがて鍼灸の東洋医学や食養生、千島学説、森下自然医学、快医学(瓜生良介提唱)などを修め、さらにお得意の柔道や空手、太極拳などのエクササイズを含んだ、独自の統括的な健康法、バイオヘルスに到達します。

 こんな簡単に彼の生涯を紹介することは誠に申しわけなく、まだまだ続けたいのですが、そろそろタイトルに書いた二回目の発表の内容に移ります。

 この階層社会の始まりというのは、ある著作を読んだのがきっかけになりました。

神々の沈黙.jpg

ジュリアン・ジェイン著の邦題『神々の沈黙』(The origin of consciousness in the breakdown of bicameral mind)。これには三千年から四千年前、平和な小集団で生活していた人々が、貧困や飢餓をきっかけに徐々に争い、搾取、支配、奴隷などの苛烈な階層社会を形成して行ったことが述べられています。さらに防御本能から自己意識、自己保身、自己中心性が形成され、やがてはエゴセントリックな社会、終わりのない戦争や搾取、貧困や差別の現代が出来上がったということです。

 つまり、この弱肉強食や生存競争の社会は人の本能ではないということ、やむえずに形成された後天的な性癖であり、これはなくすことが可能であるということなのです。始まりがあれば終わりもある。そういう意味で、階層社会の始まりと終わりと名付けました。

 ここからはその本を離れ、どんどん妄想を広げさせていただきます。しかし、この自己中心性や競争意識がなかったら、このインターネットなどのハイテクノロジーも自動車も飛行機も、ロケットや宇宙開発もありえなかったのではないでしょうか。すべては戦争の生んだ遺産と言えるのではないか。

 ではそれの究極の目的はなんだろう! そっか、隕石からの回避、それにちがいないという結論に達したのはずいぶん前のことです。小惑星軌道を変更できるほどの宇宙技術がようやく開発され、小惑星「イトカワ」に到達。

イトカワ.jpg

今年は「リュウグウ」にも達しました。

リュウグウ.jpg

このハイテクが完成した暁には、このエゴセントリック体質が徐々に人々の間から消えていくのも時間の問題。階層社会が徐々に平たくなっていくことが、近未来に起こりえるいう確証を得ているわけです。
 
その確証にはもう一つの事実があるのですが、それは次回で。  ...続く


*著者 プロフィール
なごやかクリニック院長
名古屋醫新の会代表 
岡田 恒良(おかだつねよし)
https://www.facebook.com/tsuneyoshi.okada1
1955年岐阜県生まれ
1980年岩手医科大学卒
約20年消化器系一般外科医として通常に病院勤務。市民病院で外科部長として勤務中、ある先輩外科医との運命的出会いがあり、過剰医療や過剰投薬の現状に気づき、自然医学に目覚める。
1999年千島喜久男博士の勉強会を名古屋で主催、マクロビオティックの久司道夫氏の講演会企画をきっかけに病院を辞職。
御茶ノ水クリニックの森下敬一博士の機関誌《国際自然医学》に「自然医学の病態生理学」を長期連載。中山武氏の主催するがんの患者会「いずみの会」の顧問をしながら安保徹教授の講演会を開催し、親交を深めた。
看護学校にて補完代替医療について講義中。
2006年コロンビアのドクトル井上アトム氏に出会い、運動療法・自然療法の重要性を認識。以来南米に3度訪れる。 「自他一如」の探求は2000年から続く。

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