MAGAZINEマガジン

連載

「自他一如」〜医の現場から見えること〜 by 岡田恒良

第五回 一番大事なミネラルは? NaとK そのバランス

 最近の食事はどうしてもカロリー中心になりがちで、お腹がふくれれば満足という毎日ではないでしょうか。またパックや袋に入った手軽な加工食品がどんどん増えて、生き物を食べているという感覚が鈍っています。
こういう食生活をしているとミネラルがおろそかになりがちなのです。中でも一番大切で、生き物の原点となるミネラルはズバリ、カリウムです。陽イオンであるカリウムを細胞の中に取り込むこと、これがバクテリアから始まるすべての生き物の原点なのです。陽イオンということはすなわち電気的プラス、細胞内に電気を持つことです。海中で生まれたと言われる生命は、カリウムイオンを有する細胞であり、あらゆる活動の電気信号として役立っています。

 自然に近い食生活をしている頃はカリウムは当然食事に含まれていました。これまではあまりに普遍的すぎてわざわざ摂取する必要がなかったのです。ところが食生活が変化し、加工品が増えてくると、このカリウム不足が問題になってきました。白米や小麦粉にはカリウムがほとんど含まれていません。最近精製した白い小麦粉を使った調理・食材が非常に増えてきました。同時に生きた野菜を食べる生活がどんどん減ってきているのです。加工食品販売や外食産業が盛んな都市部では、老若男女を問わず野菜不足になりがちです。

 一方、普通の塩である塩化ナトリウムに関しては現代人はまず不足していません。不足どころか、過剰摂取しているのではないでしょうか。多忙とストレスで濃い味を好む方が増えています。減塩はなかなかできず、医療者の掛け声だけになっています。

 食塩に関して忘れてならないのは、過剰摂取もいけませんが、不足もいけないということ、さらに冒頭に書いた、カリウムとのバランスが大切ということです。野菜も摂らずに食塩のナトリウムばかり摂取すれば、高血圧や動脈疾患のリスクが高まります。しっかり野菜や果物を食べていれば、ナトリウムを無理に減らすこともないのです。減らしすぎて活力が低下してはいけませんね。このバランスを保つような食生活を心がけてください。

バランス.png

 カルシウム(Ca)も大事なミネラルですが、骨のためだけに必要だと考えている方が多いと思います。これは間違いです。カルシウムイオンは筋肉収縮の電気的スイッチとして働く非常に大切なイオンです。レシプロエンジンのプラグのようなものですね。ですから、血中のカルシウムイオン濃度は厳密に調節されています。つまり下げるホルモンと上げるホルモンが分泌されていて、微妙に調節しているのです。ですからカルシウムを食べれば骨が丈夫なるなんて単純なことでは決してありません。過剰に摂取すれば血管に沈着して動脈硬化になったり、尿管結石になったりもします。 ...続く


*著者 プロフィール
なごやかクリニック院長
名古屋醫新の会代表 
岡田 恒良(おかだつねよし)
https://www.facebook.com/tsuneyoshi.okada1
1955年岐阜県生まれ
1980年岩手医科大学卒
約20年消化器系一般外科医として通常に病院勤務。市民病院で外科部長として勤務中、ある先輩外科医との運命的出会いがあり、過剰医療や過剰投薬の現状に気づき、自然医学に目覚める。
1999年千島喜久男博士の勉強会を名古屋で主催、マクロビオティックの久司道夫氏の講演会企画をきっかけに病院を辞職。
御茶ノ水クリニックの森下敬一博士の機関誌《国際自然医学》に「自然医学の病態生理学」を長期連載。中山武氏の主催するがんの患者会「いずみの会」の顧問をしながら安保徹教授の講演会を開催し、親交を深めた。
看護学校にて補完代替医療について講義中。
2006年コロンビアのドクトル井上アトム氏に出会い、運動療法・自然療法の重要性を認識。以来南米に3度訪れる。 「自他一如」の探求は2000年から続く。

NEXT

PAGE TOP