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「自他一如」〜医の現場から見えること〜 by 岡田恒良

第一回 脂質が大事

 高校の生物でも習うことではありますが、生き物の細胞は、すべてが脂質で覆われています。細胞膜というのは脂質の二重層で構成されている、これ皆さんの記憶にありますでしょうか。
 脂質の細胞膜は、実は植物にも動物にも、さらにバクテリアのような微生物にもあるもので、生命体の共通点でもあります。水中で生きるためにも、脂質による防護が必要なのです。脂質は水に溶けませんから。
 食べた脂質は、細胞の膜の脂質に直接関連があります。いい脂質を食べていると、いい細胞膜ができるというわけです。ですから表題のように、脂質が大事という結論になるのです。

 良い脂質とは何でしょう。ズバリ、柔らかい、可動性のある脂質です。一日に約1700億という膨大な数が生産されている赤血球など、食と密接に関連が出てきます。柔らかい脂質を食すれば、変形能に富んだ赤血球ができ、血流もサラサラになるわけです。 

 では柔らかい脂質とは何でしょう。それは不飽和脂肪酸です。脂肪酸には、飽和脂肪酸と、不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸というのは、すべての炭素に2個の水素を結合しています。

脂肪酸.png
 
 それに対し、ところどころに水素の欠損があって、炭素の二重結合が存在しているものを、不飽和脂肪酸といいます。鎖状の脂肪酸は、その不飽和の部分で折れ曲ります。

 一方、飽和脂肪酸の方は直線状です。直線状の脂肪酸は、周りと密接に接しています。ところが、曲がっている不飽和脂肪酸は、周囲との間に隙間ができるのです。満員電車を想い浮かべて下さい。皆がきちっと真っ直ぐ立っていたら、いっぱい乗り込んでしまい、身動きできません。ところが、手や足を広げていたら、当然隙間ができて、すし詰めになりませんね。その方が細胞膜には可動性ができるのです。

 足が曲がっているような形の脂肪酸、これが不飽和脂肪酸と言うわけです。これは植物に多く含まれています。寒さに強い特徴があるからかもしれません。寒くてもなかなか固まらず、液状を保ちます。そのため海を泳ぐ魚にも不飽和がたくさん含まれています。

 不飽和脂肪酸は、皆さんもご存知のオメガ3、オメガ6、オメガ9の三種類に分類できます。炭素の先端から3つ目に二重結合があれば、オメガ3、6つ目ならオメガ6、9つ目ならオメガ9というわけです。 

 直線状の飽和脂肪酸やオメガ9は、人体も合成している脂質です。人体で合成ができない脂肪酸、それがオメガ3とオメガ6です。こういうものを必須脂肪酸といいます。重要な脂質というわけです。 ...続く


*著者 プロフィール
なごやかクリニック院長
名古屋醫新の会代表 
岡田 恒良(おかだつねよし)
https://www.facebook.com/tsuneyoshi.okada1

1955年岐阜県生まれ
1980年岩手医科大学卒
約20年消化器系一般外科医として通常に病院勤務。市民病院で外科部長として勤務中、ある先輩外科医との運命的出会いがあり、過剰医療や過剰投薬の現状に気づき、自然医学に目覚める。
1999年千島喜久男博士の勉強会を名古屋で主催、マクロビオティックの久司道夫氏の講演会企画をきっかけに病院を辞職。
御茶ノ水クリニックの森下敬一博士の機関誌《国際自然医学》に「自然医学の病態生理学」を長期連載。中山武氏の主催するがんの患者会「いずみの会」の顧問をしながら安保徹教授の講演会を開催し、親交を深めた。
看護学校にて補完代替医療について講義中。
2006年コロンビアのドクトル井上アトム氏に出会い、運動療法・自然療法の重要性を認識。以来南米に3度訪れる。 「自他一如」の探求は2000年から続く。

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