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日米開戦 陸軍の勝算 ー「秋丸機関」の最終報告ー

負けはしない戦争だった!
七十年前のあの戦争は、本当に無計画で非合理なものだったのか。
開戦を決意した陸軍は無謀にも、勝算のない戦いに、やみくもに突入したのか。そんなはずはない。近代史を研究する著者は「陸軍戦争経済研究班」の報告書を詳細に調査し、少なくとも陸軍は、科学性と合理性に基づいて開戦に踏み切ったことを知る。  
秋丸機関と呼ばれた研究班は、第一級の英才を動員し、英米の経済力を徹底研究。報告書に基づいて策定された戦争戦略は、大本営政府連絡会議に上げられたのだった。報告書の真相は戦後、意図的に歪曲化(わいきょくか)され、闇に葬られた。そこには何が書かれていたのか。報告書の真の意図を探り、戦後の常識に一石を投じる驚愕(きょうがく)の研究書!〜書籍内容紹介より〜

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日米開戦陸軍の勝算 ー「秋丸機関」の最終報告ー
林千勝:著

「日米開戦 陸軍の勝算」を読む
井本 省吾コラム
〜 一部転載 〜
"その結論は次のようなものだった。

1)極東の米英蘭根拠地を攻撃して自存自衛を確立。
2)東南アジア、インド洋からの英米による蒋介石政権への軍事物資補給ルート(援蒋ルート)を攻撃、支配し、蒋政権を屈服させる。
3)独伊と連携して英国の屈服を図る。
4)最強の敵となる米国とは極力戦わず、戦闘は日本近海に米国をひきつけて行う(戦争は本拠地からの距離の二乗に比例して自陣が有利である。だからハワイ攻撃などはしない)

陸軍省の研究では戦争の舞台は東南アジアとインド洋であり、当時の日本の海軍力と英国の海軍力を比較すれば十分に勝算があった。米海軍もフィリピン基地など日本近海の西太平洋側だけならば、当時は日本側の方が物量的に優れていた。

研究班のシナリオ通りに実行すれば、緒戦で英国軍を破って、東南アジアとインド洋の制空海権を奪取、日本はインドネシアの石油を確保。援蒋ルートも断ち切り、シナ大陸の戦闘を極めて有利に展開できる。

さらにインド、東南アジアが列強から独立し、日本に味方する。のみならずドイツと提携して米国によるインド洋、スエズ運河からの英ソへの援助ルートを断ち、独伊が欧州戦線で決定的な優位に立てる。

以上は、かなりの成功の可能性に富んだ合理的な戦略であった。"

*TAO LABより
事実は様々な要因が絡み合って何処に視点を置くかでその意味は変わってしまう。この書籍は長年の疑問が晴れたような視点を与えてくれた。

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